ニュースを賑わすワイヤレス

この1年間、5Gの動向に先行する形で概念実証やヒーロー実験が行われ、ニュースを賑わせてきました。これらは当然の反応かもしれません。 既存の4G LTEと比べると、5Gのパフォーマンスは驚くほどに向上します。 実際の使用事例として、以下のような意欲的な目標が掲げられていますが、詳細に確認すると、まさに驚嘆に値することが分かります。

  • データレートが最大で100倍向上
  • 接続されるデバイス(ユーザーではなく主にIoT)の数が最大で100倍に増加
  • レイテンシーが最大で10分の1に減少
  • データ量が1,000倍に増加

ほとんどのニュース報道で、5Gワイヤレス技術の試験に関連する内容を取り上げてきました。フレキシブル波形、Massive Multiple-Input & Multiple-Output(MIMO)のアンテナ・アレイ、ミリ波の伝播、フレキシブル・コーデック、新しい周波数帯域、ビームフォーミング、ビーム追跡などの技術です。 無線アクセス・ネットワーク(RAN)において、既存のモバイル・ネットワークの一部が初めてアップグレードされることになっているため、これらの報道内容には説得力があります。

5G New Radio(NR)は、2G、3G、および/または4Gの無線とアンテナが既設されている場所に設置されます。 しかし、ワイヤレス・ベンダーとモバイル・ネットワーク事業者(MNO)は、5G NRの大規模な導入が開始される前に、新しいワイヤレス技術が確実に動作し、仕様に従っていることを確認して、納得する必要があります。 この重要な段階をクリアするには、5G NRを旧世代のワイヤレス技術を支える既存の有線ネットワーク・インフラに接続する方法が最も簡単です。 5G NR技術の有効性が実証されれば、大規模な導入が一気に開始されることになるでしょう。 GSMAは、それを裏付けるような発表を行っています。5Gネットワークは、2025年までに地球上の全人口の3分の1をカバーし、導入される接続数は11億に達するということです。

2020~2025年の5Gの導入予測

図1:2020~2025年の5Gの導入予測(出典:GSMA)

承認された5G New Radio(NR)のNon-Standalone(NSA)標準

去年の12月、ポルトガルのリスボンで5Gを巡る画期的な出来事が起こりました。 5G NR NSA標準が承認されました。これで、正式に標準ベースの5Gの時代が始動します。5Gの機器を販売するベンダー、5Gのサービスを提供するMNOの本格的な競争が始まることになります。 複数のTier 1ネットワーク事業者とベンダーの共同発表からも分かるように、この画期的な出来事を契機に、2018年を通して「標準ベース」の5Gの試験、概念実証、ヒーロー実験が加速されます。共同発表では、早ければ2019年の初頭にグローバル・モバイル業界が大規模な試験と商用展開を始められるように、5G NRのフルスケールの開発を始動するための最初の5G NR標準が完成したという内容が伝えられました。 つまり、正式に5Gを巡る闘いの火蓋が切って落とされたということです。

モバイル・ネットワークの接着剤として機能する有線インフラ

AT&TのCEOであるランダル・スティーブンソン(Randall Stephenson)氏の見解は、次のとおりです。「ワイヤレス化が進むほど、固定回線への依存度は増します。 つまり、これらのモバイル・ネットワークにおいてデータ要件が増すほど、より一層の高密度なセルサイト・グリッドが必要になるということです。 より一層の高密度というのは、より多くのセルサイトが必要になるという意味です。 これらのすべてのセルサイトは、ファイバーとイーサネットによって接続されます。 基本的に必要となるのは、このような大規模な固定回線ネットワークを構築し、その終端にワイヤレス・アンテナを接続することです。」 まさに、そのとおりだと思います。

ランダルの見解は、5Gへの移行パスを端的に言い当てています 有線ネットワークのエッジに新しい5G NRを導入し、有線回線を大規模にアップグレードします。 もちろん、基地局、ビル、都市のさまざまな設備に新しい5G NRを設置すれば完了、というほど単純ではありません。 たとえば、RFサービスエリア計画によって5G NRの設置場所を正確に把握する必要があります。この場合、新しいスモールセルの導入など、諸々の作業が必要になりますが、これらの作業を最適に実行するには、まず実際の条件下で技術を徹底的に試験する必要があります。 とはいえ、データセンターとの接続では有線ネットワークが、複数世代のワイヤレス技術をつなぐ「接着剤」としての役割を果たすので、基本的にはランダルの見解は当たっています。

今後は複数世代が協調する時代が到来

5Gは、4Gとその派生バージョン(古いLTE、より新しいLTE-AやLTE-Pro)などの旧世代のモバイル・ネットワーク技術の完全な置き換えを意図していたわけではありません。 新しい世代が旧世代を完全に置き換えることは実際にはあり得ないので、5Gは、4Gとの共存を意図しており、多くの場所で3Gや、さらには2Gとも共存する可能性があります。 皆さんも、旅行中にスマートフォンが特定の時間帯に2G、3G、4Gネットワークを行き来するのを経験したことがあるかもしれません。 これから分かるのは、旧世代のモバイル技術をサポートする有線ネットワークは、5Gもサポートするということです。

複数世代の共存

図2:複数世代のモバイル技術の共存(出典:GSMA)

5G NR NSA機器は、2G、3G、および/または4G技術に対応する既存の有線ネットワークに「接続」されます。 これにより、既存の有線ネットワークをアップグレードすることなく、この新しいワイヤレス技術の有効性を実証できるだけの十分な広さを持つエリアに5G NRをすばやく導入して、試験を実施することができます。 そう考えると、これはすごい方法です。 実際の環境で5G NRワイヤレス技術の試験を実施して、信頼性が十分であることを実証できれば、大規模な導入を開始できます。 期待が高まる5Gネットワークが前述したようなパフォーマンスを実現すると考えると、これがいったん開始されると、特に多くの5G NRが接続されるので、共通の有線インフラストラクチャーにもスケーリングの能力が求められます。 有線側でワイヤレス側と同じペースを維持できない場合、5Gネットワークは、5Gの使用事例で必要とされるエンドツーエンドの本来のパフォーマンスを発揮することができません。

1社ですべてを完璧に提供できるベンダーは存在しない

5Gへの移行は課題と機会をはらむ複数年にわたる道のりとなりますが、これまでのモバイル世代も同様な道のりを経てきたのではないでしょうか。 業界は過去のアップグレードから多くを学んでいます。この経験を5Gに適用することができます。また、ワイヤレスと有線の両方のネットワーク分野で最高のテクノロジーを提供するベンダーは存在しないということも学んできました。とどまるところを知らない勢いで「オープン性」がグローバル・インターネットの隅々まで浸透してきた理由は、そこにあります。モバイル・ネットワークがその例外から外れることはないでしょう。また、そうあってはならないはずです。 オープン性は、最高の組み合わせのネットワークを構築するためのより広い選択肢と能力を提供します。

一部のベンダーだけが、他より優れたテクノロジーを持っているというのが、(通常は語られることのない)真実です。 しかし、ネットワークがオープン・ネットワークの視点とオープン・スタンダートに基づいて設計されている限り、モバイル事業者は望みどおりのテクノロジーを選択して、必要な場所に、必要なタイミングで、適用することができます。 簡単に言うと、最高のエンドツーエンド・ネットワークを構築するには、5Gが共通の有線ネットワークを基盤として旧世代のモバイル技術と連携する必要があるのと同様に、複数のベンダーおよびその製品は、連携して共存する必要があるということです。

Ciena 5Gネットワーク・ソリューションのご紹介

Cienaは本日、既存の有線インフラストラクチャーをスケールアップすることで、将来の5Gだけでなく、旧世代のモバイル技術もサポートできる複数の方法をモバイル事業者に提供する、Ciena 5Gネットワーク・ソリューションを発表しました。 実際、4Gだけでなく、2Gや3Gさえも世界中のさまざまな場所に存在しています。それらをすぐに置き換えることができないのは動かしがたい事実です。 複数世代にわたるモバイル技術は、今後何年にもわたって共存していきます。Cienaは、この事実をしっかりと認識しています。 そのような理由から、当社は、MNOがネットワークの構成要素を柔軟な方法で選択できるようにオープン性を取り入れて、その成果としてクラス最高のモバイル・ネットワークと、高度に差別化されたMNOサービスの提供を実現しています。

Mobile Word Congress 2018のCienaのブースにお立ち寄りください。

5Gネットワーク・ソリューションの詳細を確認して、モバイル・ネットワークの将来についてお話しになりたいですか。 それならば、ぜひMobile World Congressの第2ホールの2J51スタンドまで足をお運びください。 バルセロナでお会いしましょう!

3GPPの集合写真

上記の写真は、12月にポルトガルのリスボンで行われた5Gシステム・アーキテクチャー標準の正式な完成に集まった、3GPPアーキテクチャー・ワーキング・グループのSA2のメンバーです。  集合写真 @GPPLive