4G/5Gバックホール・ネットワークにスポットを当てる
xHaulについての再確認
xHaulとは、セルサイト間の相互接続、モバイル・コア・ネットワークへの相互接続、最終的にはアクセス対象のエンドユーザー・データとコンテンツがホストされているデータセンターへの相互接続を行う、フロントホール、ミッドホール、バックホール・トランスポート・ネットワークを意味します。5Gは、以下に挙げる5Gユースケースの3つの主要カテゴリーをサポートし、ネットワーク・スライシングによって推進されます。各ユースケースには、モバイル・サービスがフロントホール、ミッドホール、そしてバックホール・ネットワークを横断するときのネットワーク・パフォーマンスの独自の要件が定められています。
- eMBB(enhanced Mobile Broadband、超高速大容量)。有線容量の大幅な増強が必要です。
- mMTC (massive Machine-Type Communications、多数同時接続)。数百万から数十億を超えるマシン(Massive IoT)を最適に接続するために、分析主導の自動化が必要です。
- urLLC(ultra-reliable Low-Latency Communications、超高信頼低遅延)。確実性の高い超低遅延のパフォーマンスを達成するために、マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)と確実性の高いパケット・オプティカル・トランスポートが必要です。
ネットワーク事業者、モバイル事業者、ホールセール事業者は等しく、各ネットワーク・スライスのパフォーマンスをライフサイクル全体を通して保証できる必要があります。これが有線ドメインにおいて意味することは、5Gサービスを適切にサポートするには、容量を拡大するだけでなく、フロントホール、ミッドホール、バックホール・ネットワークにおいて特定のトラフィック管理機能が必要であるということです。レイテンシーの要件がフロントホールとミッドホールのネットワークに比べてそれほど厳格でないバックホールでは、パフォーマンス・アップグレードにおいて容量が極めて重要になります。一般的な1GbEは、現行の4Gで10GbEへ、5Gではそれ以上に拡大されます。
レイテンシーの要件がフロントホールとミッドホールのネットワークに比べてそれほど厳格でないバックホールでは、パフォーマンス・アップグレードにおいて容量が極めて重要になります。一般的な1GbEは、現行の4Gで10GbEへ、5Gではそれ以上に拡大されます。
xHaulのポジションについての再確認
4Gにおいては、フロントホール・ネットワークが遠隔無線ヘッド(RRH)を遠隔にある集中型/クラウド型ベースバンド装置(BBU)に接続し、一方、バックホールがBBUを4GのEPC(Evolved Packet Core)に接続します。5Gにおいては、New Radio(NR)がBBUに接続され、CU(Central Unit、集約基地局)とDU(Distributed Unit、リモート局)にディスアグリゲートおよび仮想化されます。MNOが現在、新しい5G eMBBサービスを提供するために取り組んでいるバックホール・ネットワークは、4Gのバックホールとほぼ同じです。とはいえ、5G NRはより高いパフォーマンスとより広い帯域を提供するので、はるかに大量のトラフィックを伝送します。
図1:xHaulネットワークの4Gから5Gへの進化
1GbE、10GbE、100GbEインターフェイスだけでなく、より新しい25GbEや50GbE、さらには最高レートの400GbEインターフェイスもバックホールを提供します。伝送距離は、通常は100キロ未満から数百キロであり、長距離ではコヒーレントおよび非コヒーレントのDWDM光モジュールが使用されます。このモジュールは、通常、プラガブル・フォームファクターに対応します。
バックホールのレイテンシー要件は一般的には10msから300msですが、この要件はフロントホール・ネットワークだけでなく、ミッドホール・ネットワークと比べても大幅に緩いものです。バックホール・ネットワークは、通常はイーサネット・ベース(IPペイロードを伝送)ですが、光ファイバーが利用できない場合や経済性が低い場合には、ダークファイバー、マイクロ波ベースの無線、より新しいIAB(Integrated Access Backhaul)を使用することもできます。各バックホール技術には、固有のメリットとそれぞれに適した場所があります。つまり、5Gではバックホール技術を任意に組み合わせて使用することができます。
5G非スタンドアロン(NSA)と5Gスタンドアロン(SA)モード
2017年12月に、3GPPグループは5G NR仕様を承認しました。これは、5G競争の幕開けを告げる重大な出来事となりました。利用可能になり次第、業界は標準ベースの5G NRを展開できるようになり、MNOは無線のパフォーマンスと標準準拠のテスト、および無線周波数(RF)のモデリングとプランニングを実施し、最終的に5G NRを基地局の最上部、電柱、建物、その他の場所に物理的に導入できるようになりました。
5G NRは、初期の段階では既存の4G EPCネットワークに接続され、無線ドメインを介してエンドユーザー(人とマシン)にこれまでにない5Gのパフォーマンスを提供します。ただし、有線ネットワーク・ドメインでは、パフォーマンスは4Gのままです。この構成は5G非スタンドアロン(NSA)と呼ばれ、今日のほとんどの5Gエンドユーザーが体験しているものです。つまり、「プリ5G」または「パーシャル5G」です。これは巧みな方法であり、5Gコア・ネットワークとxHaulネットワークを着実にアップグレードしながら、最近承認済された3GPP Release-16や、Release-17による標準ベース・テクノロジーの商用展開が行われるときに、5G NRの導入を加速することができます。
5G NSAモードは、初期の段階では主にビデオ中心のeMBBユースケースをターゲットとします。最新のEricsson Mobility Reportによると、2025年までに全トラフィックに占めるビデオ・トラフィックの割合はおよそ76%になります。しかし、5G NSAにはネットワーク・スライシング機能と5Gのサービス品質(QoS)フレームワークは含まれず、超低遅延も提供しません。つまり、現在のeMBBは強化されているとはいえ、コアの有線ネットワークが更新されない限り、ほとんどの消費者のエクスペリエンスは4Gとあまり変わらないということです。
「フル5G」とも呼ばれる5G SAが始まるのは、5Gコア・ネットワークが5G NSAで使用されている現在の4G EPCを置き換えて、5G NRがその5Gコア・ネットワークに接続され、エンドツーエンド・パフォーマンスを提供することによって5Gの能力を完全に発揮できるようになるときです。これを実現するのが、無線ドメインと有線ドメインにおけるネットワーク・スライシングと5GユースケースのurLLCとmMTCカテゴリーを実現する5G QoSフレームワークです。5G SA商用サービスの提供は、既に大手MNOが発表しています。完全な5Gパフォーマンスを一般利用できるようになるまでには時間がかかりそうです。MNOはさまざまなビジネス目標に基づいてそれぞれに独自の開始点と終点を持っているため、MNOごとに時期は異なるものになるでしょう。
図2:5G非スタンドアロン(NSA)と5Gスタンドアロン(SA)モード
5G NSAがバックホール・ネットワークにもたらす最も大きな影響は容量の増加です。5Gエンドユーザーが生成する帯域は、4G LTEエンドユーザーに比べて最大10倍になる場合があります。言い換えると、1台の5Gスマートフォンは、場合によっては4G LTEスマートフォンの10倍以上の無線容量を消費する可能性があるということです。当然ですが、それぞれの5Gエンドユーザーに対する実際の影響は、現実世界のさまざまな要因が関係しています。スマートフォン自体のパフォーマンス、使用されている無線スペクトル範囲、MNOが提供するパフォーマンスなど、さまざまな要因が影響しますが、当社が目指す方向はお分かりいただけると思います。
1台の5Gスマートフォンは、場合によっては4G LTEスマートフォンの10倍以上の無線容量を消費する可能性があるということです
ホールセール・ネットワーク事業者の重要性
5G関連の関心は、ほとんどがMNOに向けられています。私たちはモバイル・サービスをMNOから購入しているので当然といえば当然ですが、ホールセール・ネットワーク事業者への5Gの影響も忘れないようにしましょう。ホールセール・ネットワーク事業者は、スモールセルからマクロセルまでのさまざまなセルサイトや、セルサイトまでの有線アクセスを持たないMNOに接続を提供します。
ホールセール・バックホール・サービスは、特に北米ではごく一般的なサービスです。これが意味することは、ホールセール事業者は、必要な5Gのパフォーマンス(例:レイテンシー、容量、タイミングと同期)をカスタマーであるMNOに提供するために、ネットワークをアップグレードする必要があるということです、ホールセール事業者は、既にそれを実施しています。5Gによってオープンな標準ベースのフロントホールとミッドホール・ネットワークが導入されることを前提に、ホールセール事業者は、現在のバックホールから、フロントホールとミッドホールのネットワーク領域へ接続サービス・ポートフォリオを拡大することができます。
Cienaの新しい5Gルーター・ポートフォリオ
標準ベースのオープンなxHaulトランスポート・ネットワークにより、モバイル事業者とホールセール事業者は等しく、4G/5G C-RANとD-RANのトラフィックを共通の有線インフラに統合することができます。これにより、ネットワークの所有と運用が大幅に単純化されて、費用対効果が向上する統合xHaulネットワークができあがります。これはまさに、当社が新しい5164、5166、5168 ネットワーク・スライシング・ルーターを設計したときに思い描いていたことです。これらのルーターはすべて、これまでと異なるより優れた方法で、自動化されたオープンで無駄のない、アクセスからメトロまでの標準ベースのIPネットワークを構築する、Adaptive IPTMをベースにしています。
4Gと5Gの統合xHaulネットワーキングは、市場が目指す方向であり、Cienaが推進している方向でもあります。